家族信託② 家族信託の仕組みと用語
1 家族信託を理解するうえで、最低限押さえておく必要がある用語があります。信託とは、ざっくり言えば、ある人が、財産を他の人に託して、その財産を管理してもらうことをイメージしてもらえればと思います。
2 もっとも、信託は法的に様々な定義や規制があり、信託を組むうえで理解しておかなければならない法律用語が存在します。信託を理解する出発点として理解しておくべきは、「委託者」「受託者」「受益者」「信託目的」「信託財産」になります。
「委託者」とは、信託をする者をいいます。(信託法2条4項)
「受託者」とは、委託者から、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいいます。(同条5項)
「受益者」とは、法律上の定義(同条6項7項)は複雑ですので、信託財産から利益を受ける権利(受益権)を有する者とイメージしていただければと思います。
「信託目的」は、まさしく信託を行う目的です。
「信託財産」は、受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産といいます(同条3項)。
次項で、具体例に沿って、用語を理解しましょう。
3 具体例
- Aさんは、多額の資産(マンション、預貯金など)の保有しています。最近、体調を崩すこともしばしばあり、老後の資産管理に悩みを抱えています。
Aさんは、自分の持っている資産を、息子Bに管理を任せておくことで、将来自分が認知症になったりしても悪影響が出ないようにしておきたいと考えています。そこで、Aさんは、マンションや金銭の管理をBに任せて、Bから家賃や現金を受け取るという仕組みを作ることにしました。 - Aさんは、息子Bに財産の管理・処分を任せることよって、自身の老後における財産管理の負担から解放されることを目的として、息子Bと信託契約をします。具体的には、Aの財産(マンションや金銭)の管理や処分をBに任せ、そこからAは定期的に金銭の給付を受けるという仕組みになるのです。
- このような場合のAさんは「委託者」、息子Bは「受託者」となります。「信託財産」は、AがBに託したマンションや金銭がこれにあたります。そして「受益者」は誰かというと、マンションや預貯金から定期的に金銭の給付を受けるAになります。つまり、Aは「委託者」兼「受益者」ということになりますね。そして「信託目的」とは、息子Bに財産の管理・処分を任せることよって、自身の老後における財産管理の負担から解放されることとなります。
- 以上が信託を理解するうえで押さえておくべき最初の用語になります。
こうしてみると、後見でもよいのでは?と思うかもしれません。次回は、後見との違いについて説明していきたいと思います。
2022.12.2
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