家族信託③ 家族信託と後見
1 家族信託と後見(法定後見)の違いは、大きく分けて3点あると考えられます。
2 管理する財産の範囲
1点目が、信託の場合の「受託者」、後見制度における「成年後見人」の管理する財産の範囲と権限に違いがあります。
- 成年後見人(任意後見制度を除く。)が、裁判所から選ばれた場合、成年後見人は、成年被後見人の財産の「全部」について管理をしていくことになります。
- 他方で、受託者の場合、あらかじめ信託契約などにより、どの財産について管理することになるのかという点について定めることになります。つまり、「特定」の財産を選んで管理を任せることになるという違いがあります。
3 財産を管理する人を選べるかどうか
2点目は、財産を管理する人、すなわち「受託者」と「成年後見人」を誰にするかというのを選ぶことができるかどうかという点です。
- 成年後見人(任意後見制度を除く。)の場合、裁判所が適切な成年後見人を選ぶことになります。裁判所は、成年後見人の候補者についての意見などは聞きますが、これに拘束されずに自由に成年後見人を選ぶことができます。そのため、成年後見人として子を候補者として推薦したとしても、裁判所が様々な事情を考慮して、弁護士などの専門家を成年後見人に選ぶことがあります。すなわち、成年後見人が誰になるか、という意味では申立てをしてみないと分りません。なお、候補者としてあげた人物を選んでもらえないことを理由に、申立てを取り下げることはできません。
- 他方で、受託者については、一般的に信託契約という方法が採られていますので、委託者と受託者との間の契約で成立します。通常、委託者は、あらかじめこの人なら財産の管理を任せても大丈夫と考えて受託者になってもらえる人と話をして契約するわけですから、誰が管理するかについては当然委託者の予定通りの人が就任することになります。
4 財産を管理する人に対する監督
3点目は、成年後見人や受託者に、あまりに自由に財産管理をさせるというのはどうか、という意味で問題があります。
- 成年後見人においては、裁判所の監督・関与のもとで、財産を管理していくことになります。
- 他方、受託者の場合、裁判所の一般的な監督に服することなく、どのような監督方法をとるかについても自由に信託契約の中で決めていくことになります。
以上が大きく分けて「後見」と異なる点となります。
弁護士 河邉義大
2022.12.12
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