家族信託④ 家族信託と相続
前回、家族信託と後見の違いについて説明しました。
今回は、家族信託と比較されるもう一点の法制度として、「相続」をとりあげ、家族信託と相続との違いを説明します。
1 相続
⑴ まず、相続は、遺言を書くことで、財産を誰に相続(遺贈)させたいかを決めることができます。例えば、Aさんが、亡くなったあとは財産を息子Bに譲りたいと思い、財産を「Bに相続させる。」という遺言を書くことで、Bさんが相続放棄などしなければ、Bさんに財産は相続されることになります。
⑵ もっとも、Bさんが亡くなった後は、Cさんに財産を引き継がせたという遺言は、無効になるという見解が有力であることから、そのような遺言は書いても意味がありません。
⑶ すなわち、Aさんは、遺言で、①B→②Cというように財産を承継する順番を定めることはできないのです。
2 家族信託
⑴ 家族信託においては、委託者が自身の財産の管理を受託者に任せ、その財産から生じる利益を受益者が享受 するという仕組みになっています(なお、当該財産の所有権は受託者に移りますが、受託者は当該財産を自身の財産とは分別して管理をします)。
⑵ そして、家族信託の実質的な利益を享受する主体は「受益者」であり、受益者という立場をどのように引き継いでいくかということも信託で決めることができます。
⑶ 例えば、「委託者」Aが、自身の有する不動産の管理を「受託者」Bに任せ、そこから生 じる賃料は「受益者」であるAが享受するという信託をしたとします。
この場合、信託契約をする際に、Aが亡くなったあとの受益者たる地位をどのように承継されるかについても、契約で定めることができます。
具体的には、受益者たる地位を、Aが亡くなった場合にはBに引き継ぎ、Bが亡くなった場合にはCに引き継ぐというように定めることができます。このように受益者の承継の順番を定めることで、遺言では実現できなかった承継について信託では実現できるということになります。
2022.12.16
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